ジョージ・イネス (1825-1894)

「詩的性質は、事実や自然の真理を避けて得られるものではない…詩とは現実のビジョンである」―ジョージ・イネス

ジョージ・イネスは1825年、ニューヨーク州ニューバーグで生まれた。ニュージャージー州ニューアークで育ち、幼い頃から芸術家になることを志していた。カリアー＆アイヴス社などの彫刻会社で働きながら、イネスは古美術画家クロード・ロランやサルヴァトーレ・ローザの作品の複製を研究することで構図を学んだ。またトーマス・コールやアッシャー・デュランドの作品に触れ、レジス・フランソワ・ジニュウに師事した。

1851年、イネスはローマとフィレンツェを訪れ、哲学者であり神学者でもあるエマヌエル・スヴェーデンボリの影響を受けた。スヴェーデンボリはイネスの風景画と絵画へのアプローチに多大な影響を与えた。この流れの中で、イネスは「画家は自然を賛美するのではなく、むしろその隠された精神と根底にある本質を表現すべきである」と述べた。 ニューヨークへ戻る前に、イネスはパリに立ち寄り、名高いサロン展を訪れた。そこで出会ったバルビゾン派の画家たちも、彼の作品に重要な影響を与えることになる。スウェデンボリとバルビゾン派の影響下にあるイネスの作品からは、自然の写実や称賛ではなく、自然の細部に潜むより深い意義を見出そうとする彼の姿勢が読み取れる。

イネスは熱心な奴隷制度廃止論者であり、南北戦争終結期の自由と楽観主義というテーマは、当時の彼の絵画に見て取れる。この時期、イネスは教職にも転じ、教え子にはルイス・コンフォート・ティファニーもいた。1870年から1874年にかけての長期のヨーロッパ滞在後、イネスはニューイングランドとニュージャージーに戻り、絵画制作を続けながら風景画の可能性を探求し続けた。 1889年にはパリ万国博覧会で金賞を受賞。1894年、最後のヨーロッパ旅行でスコットランドにて、おそらく夕日を眺めながら死去し、ニューヨークに埋葬された。彼の作品群は油彩画、水彩画、スケッチを含め約1,150点に及ぶ。

「芸術の真の用途は、第一に、芸術家自身の精神性を育むことである」―ジョージ・インネス